作編曲/Composing & Arrangement: ypselon [VY1/VY2]
歌詞/Lyrics: 漆烏 故事/ストーリー/Story: 漆烏 歌曲/ソング/Song ©ypselon 2013. |
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按語/コメント/Comment
漆烏:
鷺の形に特に明確なモチーフはありません。イメージとしては、水辺、霧の中に佇む白い鷺って感じでしょうか…。 ちなみに鷺については更科源蔵の「青鷺」という詩があって、合唱曲になっています(ご存じでしたらごめんなさい)「鷺へ」はこれに感動してフラッと書いたもの…です。 ↓「青鷺」の詩のURLです。 http://www.grey-heron.net/forum/58-chorus/ 私は鳥に詳しくないのでようわからんですが、知ってる人が見るとまた違うのかもしれません。 |
ypselon:
比如説寄情以詩,比如説自由,比如説猛禽。 外形上來説我特別喜歡鷹,貓頭鷹,生態上也很喜歡禿鷲。 曾經一度將鷺讀成鷹,仿佛這樣才能想象出翺翔的景象。 你是(比我更)自由的。 這是我把詞給翻譯出來的主要原因。 曲中還有抄襲G. Mahler的片段,是不是特別熟悉? |
歌詞/Lyrics
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翻譯/翻訳/Translation
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鷺よどこまでも飛んでいけ
おまえは自由なのだから 高い建物をよけながら 鉄塔をいくつもくぐって ダムの谷を渡り みなかみを越え 景色のあるほうへ たまには田舎の沼なんかで羽を休めてさ ちょっとしたら飛んでいけよ おまえは自由なのだから 鷺よ 鷺よ どこまでも飛んでいけ 飛んでいけ おれのかわりに あいつのところまで わかっているさ 誰の一生にも どこにもないことくらい 本当の自由など だけど鷺よ おまえは飛んでいけ 羽が風をつかめる限り おれにはもうみえない 地平の先まで 鷺よ おまえは 自由なのだから |
鷺鷥啊 不論去往何方 展翅吧
因爲你是自由的 在高樓大廈間遊奕 穿行過數座鐵塔 跨越水壩的低槽 掠過更上游那江水的源頭 去到風景更美的地方 偶爾在田間沼澤合上翅膀也無妨 但是稍作休息就出發吧 因爲你是自由的 鷺鷥啊 鷺鷥啊 不論飛翔何方 展翅吧 翺翔吧 代我飛到那裏吧 我明白的啊 無論是誰 一生都不會擁有的東西 就包括了真正的自由 但是鷺鷥啊 翺翔吧 只要還能禦風前行 便飛去我無法見到的 地平綫的另一端吧 鷺鷥啊 因爲你 還是自由的 |
故事/ストーリー/Story
©漆烏 2013.
どこかの湖畔に囚われた男がいた。男はある朝、霧中に佇む白鷺を見た。白鷺はしばらくじっとしていたが、やがて飛び去った。男は想像した。あの白鷺はどこへ飛んだのだろう。あの白鷺はなぜ飛ぶのだろう。
男は知っていた。翼を持つ者であったとしても、結局は何かに囚われ、束縛されているのだと。人間も白鷺も、この世界の誰も、本当の自由など持っていないことを。だからあの白鷺も、どこへ飛んだとしても、自由にはなれないだろう。この世界は牢獄と同じだ。
しかし男は思い出した。かつては彼も翼を持っていた。今はもう翼を奪われ、狭い牢獄から出ることは二度と叶わないが、彼も確かに、自らの翼で飛んでいたのだ。輝ける翼で風を切る感触を、彼は久しく夢に見た。
男は詩を綴った。それは鷺へ向けた詩であった。彼は自分が失った"翼"を、あの鷺に託したいと思った。自分の夢を、届かなかった場所を、見れなかった景色を、鷺へ託そう。男は詩を歌にして、霧のかかる湖畔へ歌った。
男はやはり、知っていた。こんな歌が鷺に届くことはない。願いを鷺が負ってくれるわけもない。それでも男は、歌によって、自分の"翼"と決別することができた。いつか奪われ、忘れ去られ、心の深淵に堕ちたままだった"翼"を、空に解き放つことができた。男は鷺と、翼と、自由に別れを告げ、諦めを受け入れた。牢獄の中、大空をどこまでも飛んでゆく鷺を幾度の夢に見ながら、男は穏やかに死んでいった。
男は知っていた。翼を持つ者であったとしても、結局は何かに囚われ、束縛されているのだと。人間も白鷺も、この世界の誰も、本当の自由など持っていないことを。だからあの白鷺も、どこへ飛んだとしても、自由にはなれないだろう。この世界は牢獄と同じだ。
しかし男は思い出した。かつては彼も翼を持っていた。今はもう翼を奪われ、狭い牢獄から出ることは二度と叶わないが、彼も確かに、自らの翼で飛んでいたのだ。輝ける翼で風を切る感触を、彼は久しく夢に見た。
男は詩を綴った。それは鷺へ向けた詩であった。彼は自分が失った"翼"を、あの鷺に託したいと思った。自分の夢を、届かなかった場所を、見れなかった景色を、鷺へ託そう。男は詩を歌にして、霧のかかる湖畔へ歌った。
男はやはり、知っていた。こんな歌が鷺に届くことはない。願いを鷺が負ってくれるわけもない。それでも男は、歌によって、自分の"翼"と決別することができた。いつか奪われ、忘れ去られ、心の深淵に堕ちたままだった"翼"を、空に解き放つことができた。男は鷺と、翼と、自由に別れを告げ、諦めを受け入れた。牢獄の中、大空をどこまでも飛んでゆく鷺を幾度の夢に見ながら、男は穏やかに死んでいった。